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栄和堂ブログ

鎌倉の端っこにあった書店「栄和堂」僕らはここを「ブックスペース」として本屋の再発明をしていきます。公式HP http://eiwado.space/

「栄和堂」の看板をおろさない理由 〜ある女の子からの手紙〜

親父です。今回はほんの束の間でしたが本屋の店主になったときに大変感激したことを紹介します。それがあったことでぼくは栄和堂という名前を残そうという息子たちの提案に乗ったわけです。

昨年の3月に栄和堂の店主であるぼくの弟が亡くなり、途方にくれる未亡人に替わってぼくは栄和堂の店じまいを行いました。今まで商売をしたこともなく、栄和堂の手伝いすらしたことがなかったのが初めて店舗経営に携わったわけです。経営といってもぼくが直接やるわけにもいかないので、継続してくれる人や居抜きで引きとってくれる人を探しました。しかし、経営状態を知ると尻込みしてしまい結局閉店することにしました。

本は返品が効くので日販で引きとってもらったのはいいのだが、さて文房具をどうするかです。文房具は鉛筆一本からですからものすごい商品数です。とりあえず全品半額の「閉店売り尽くしセール」である。これを一週間やったので片付くかなと思ったらとんでもない話で7割くらい売れ残った。要するに在庫が半端無く多かったのである。まあ40年の遺産だからしょうがないといえばそうなのだがちょっとびっくりした。1万円の値札がついた30年前のカシオの電卓が出てきた。

つまり、顧客第一主義の経営方針だったのだ。お客さんがこんなものがほしいというと、そのひとりのために多くのものを仕入れてしまう。ここに来ると他の店では売っていないものがあるのでうれしいわという声に押されてしまうのである。だから、閉店セールのときもなじみの多くのお客さんが来てくれたのだが、口々にもうこの店がなくなるのはほんとうに寂しい、私たちはこれからどこに行ったらいいのと言う。

わら半紙とか、何種類もの便箋とか竹製のモノサシとか売れ残りがいっぱいだ。確かにスーパーやコンビニには売っていない。半額セールのあとはもう叩き売りである。最後はタダで持っていけとなる。すさまじいもので店のショーケースからレジまで持っていった。ちょっと余談ですが、タダでも持っていかないものがありました、さて何でしょうか? それは印鑑です。さすがに他人の名前のハンコウはいらないようです。

怒涛の閉店セールが終わってほっとしていたら、手伝ってくれたパートの人から、女の子から手紙をもらいましたと言って可愛らしい封筒に入った手紙を手渡された。おそらく小学校3年生くらいだったという女の子の手紙がこれである。


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これを読んだ時思わず泣きそうになってしまった。栄和堂への感謝の気持ちが込められた心温まる手紙であった。ぼくは、この手紙の内容を弟の位牌に向かってそっと報告したのだった。実はもう一通別の少女からももらった。お年寄りからも多くの感謝の気持ちをいただいたが、こうした少女たちのような若い人たちの心の片隅に栄和堂が刻まれていてくれたことがうれしい。これからぼくらがやる新しい栄和堂も手紙の少女が来てくれるような、また何年か経ってお年寄りから子供までみんなから感謝されるような存在になれたらいいなあと思うのである。